設定としては、すべてが終わって皆がそれぞれの人生を歩み始めていると言うところで。
「今日もいい天気…!」
窓を開け放ち、外の新鮮な空気を吸って、大きく伸びをする。
こんな当たり前のことも少し前まではすることができなかったのだ。
あの戦いが終わってからと言うもの、いちいち小さなことで喜べるようになったと思う。
あたたかい風が吹くようになる頃には、野原に名前も知らないような小さな花がたくさん咲くこと。
雨が降れば草木は喜び、上がったときにはまた喜びをくれる。
寒さで覆い尽くされる季節には、傍にいてくれる人のあたたかなぬくもりがあることを。
それは戦いに明け暮れていた日々があまりにも辛かったからだろうか。
それともその最中に出会った唯一無二の親友の影響だろうか。
目前に広がるみどりの野原。
その向こうに見える、かつての栄光都市、大都会ミッドガル。
「よっし、今日もがんばろうっと!」
空に輝く朝日に、今日1日の無事を願い、ティファは窓を閉めた。
「おぉいティファ!こっちから店の椅子出てきたぞー」
「本当ー? じゃあそれどっかわかるところ置いといてくれるー? ねぇウェッジ、こっち手伝って!」
メテオを防げたとはいえ、やはりミッドガルの荒廃は生易しいものではなかった。
すべての街は壊滅状態。一番の被害は場所はかつての中心地全世界を掌握する神羅カンパニーの本社ビルを構える、ミッドガル0番街だった。
0番街の再興はもう、不可能ではないかとさえ言われた。
人々は今、ミッドガルスラムの再興のため、日々街の瓦礫などの戦いの損害の後始末をしているのだ。
「しっかしよぉ、終わりってもんが見えねぇな! いつになったらこの街で生活ができるようになるんだ」
乱暴にプレートの破片を放りながら、愚痴るようにバレットが言った。
そこにいた誰もが同じことを思っていた。
しかし同意を述べるものは誰一人としていなかった。
「そんな後ろ向きなことばっかり言ってたら滅入っちゃうわよ、ね。ほら頑張りましょ。わたしなんて『7th Heaven』の新メニューだって考えてあるんだから!」
ティファが渇を入れるように、バレットの尻を勢いよく叩いた。
「ティファ…、」
「だから早くここらへんキレイにして、店だけでも開けたいんだ…。作業に疲れた人たちの憩いの場…って言ったらちょっと違うけど、家に帰る前にちょっと一息入れる場所、早く作りたいでしょ」
「よし、俺、頑張るっす」
「わたしも! …ティファの夢、早く叶えないとね」
さぁて、と再び気力を戻した仲間達の姿を見て、ティファも安堵の表情を見せた。
バレットもそれを見て、「悪かったな」と周囲には聞こえないような声でつぶやいた。
そこでふと、プレートの隙間からこぼれてくる太陽の光に気付いた。
「あ…、教会、行かなきゃ」
「エアリス」
以前からここは特別な場所だと感じていたが、それはやはりそうなのだとこの惨劇の後に確信した。
「ティファ! …毎日ありがとね」
さすがに無傷、とはいかなかったがほとんど無事だった花畑の中で、花の手入れをしていたエアリスは振り返り、やわらかな笑みを浮かべた。
街のほうはまさに惨劇と言う風景が広がっていたというのに、なぜかここだけは特別な力で護られている気がしていた。
「今日はクラウドは?」
「んーと、なんだかちょっと困ってる人がいたから」
「助けに行ったの? クラウドが? 進んで?」
「うーん、残念ながら。わたしが行くって言ったらしぶぅい顔してね!」
「やっだ、のろけはやめてよ」
「うんうん違うの。『あんたが言ったら助かるものも助からない』だって! 失礼しちゃうわよねぇ?」
「ほんと〜? …だけど良かった。ここでひとりで花の手入れなんかしてるクラウド見たら、あたし失神しちゃってた」
「あはは! ほんと!」
ここ数日で、目に付くひどい被害はだいぶ元通りに戻り始めていた。
おしゃべりをしながら、ある程度の片付けをしてからエアリスはふと、ティファを振り返った。
「あぁいけない…、今日はとっても大切な日だったんだ」
「大切な日?」
毎日が同じことの繰り返しをしている今、日付など誰もが気にしなくなっている今に?
何が大切なのかわからずエアリスに問うも、にっこり笑って返されるだけ。
「ねぇティファ、こうして今わたしたちが明日を夢見て頑張れるのって、悲しいけどたくさんの人たちの命が亡くなって…、それを乗り越えてのことなんだよね」
「…エアリス?」
「だけどね…、ほら、見て。今年もこうして、おんなじ季節に新しい芽が出てくる」
「…うん」
エアリスの指差す先には、埃やクズだらけになった土壌から、確かに芽吹く新たな命。
「嬉しいじゃない? 消えてしまった命がたくさんで悲しいばかりじゃないんだって。少しずつ、でも確かにまた新しい命が生まれてくる。
「…そうだね、」
「だからね、って言うのはちょっと唐突かな? わたしこういうこと、きちんとお祝いしてくことってステキだなぁと思うの」
「え…?」
エアリスが後ろ手にしていた両手を前に回してくると、その手には、確かにそこに咲いていた花なのに、なぜだか特別な光を放つ一輪の花。
「ねぇティファ」
にっこり、微笑を浮かべたその親友の顔は、夕陽に照らされさながら天使のようで。
「お誕生日、おめでとう」
実は、すべてが終わってからのおはなしを書くのははじめてだったりする。
ティファはね、カームあたりに住んでいると思ってくらはい。カームまでの間にも町はあるんだろうなと勝手に思っていたので、じゃあそこらへんで!
協力:アバランチのみんな。みんなには生きててもらったよ。
なにはともあれ、みんなが幸せだといいよね。
ティファ嬢おめでとーう!
バレティ、すきですよ。わたくし(え?