066:火の番 / 067:赤面 / 068:強気vs弱気 / 069:寒空の下 / 070:眼
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067:赤面
「なぁ、ミント姉ちゃん!!」
ディオが元気よくそう言っている声が聞こえる。エターナルソードの回収に来た、と言う名目で再びこの時代に現れたディオとメル、そしてクルールは、しばらくトーティスに滞在している。その間は孤児の子供たちと遊んだり、久しぶりにクレスやチェスターに稽古をつけてもらったりと、思い思いのときを過ごしていた。
中でもディオのミントに対するアタックだかアピールだかはどこか激しいものがあり、強く言えないミントをいいことに、1日中引っ張りまわしては双子の姉・メルに叱られていたりもした。
クレスはそんな様子に目を細めたが、となりに座るチェスターはどこかたくらみを含んだ目つきでにやりと笑う。
「おいおい、あんなガキにミントとられてどうするよ」
「…は?」
「は、って。ディオのやつ、すっかりミントになついてやがる」
「そうみたいだね」
クレスはやけに満足気だった。
その視線の先には、ディオに手を引かれてあちこち走り回らせられているミントがいる。
困った子ねなんて言いながら、内心じゃ嬉しく思っているだろうと言うことは、その表情からわかる。こぼれ落ちそうな笑みは、他の人間に見せるのが勿体無いと思ってしまうほど。
毎日見ていたって、見飽きるものではない。
一方チェスターは、思いのあてがはずれて少し残念がっていた。
だがそれも、きっとわかっていないからなのだろうと思い直し、もう一度にやりと笑うとクレスの目をひきつけて、言う。
「あいつ、いっちょまえにミントに惚れてやがる」
「…」
ところが、これもあてがはずれ、クレスはきょとんとした顔で見つめ返してくるだけ。
「おい、なんだよ、そりゃあいつはガキだがな、あと5年すりゃどうなるかわかんねーぞ?ミントだっておまえがぐずぐずしてたら…ってまぁ、そもそもあいつはこの時代の人間じゃないからあれだけどなー…って、なんだよクレス!」
クレスが笑いをかみ殺しているのに気がつき、チェスターは一方的に投げつけていた言葉を止めた。
「…悪いけど、チェスター」
「あん?」
「そんな心配されるほど、僕らヤワじゃないよ?」
「…!!」
やけに自信たっぷりにそう言いきるクレスに、なぜかチェスターが赤面してしまった。
(ちくしょう、旅してたあの頃のクレスはどこ行きやがった…!?)
これは由々しき自体である。
クレスが、あのクレスが。
チェスターは驚きのあまり、二の句を告げない。
「…でもそろそろ僕も寂しくなったから返してもらってこようかな」
それはとどめだった。
立て続けにとんでもない発言を聞かされ、チェスターはいよいよ絶句してしまう。
「ミントー、」
「あ、クレスさん」
「師匠!」
クレスの声に、ミントとディオはくるりと振り返り、笑顔で迎える。
その微笑には、こうしているとまるで家族みたいだと言う気持ちも含まれていたのだが、心の中だけにとどめた。
「ねえ、そろそろ帰らない?僕もそろそろ構ってもらわないとすねちゃうかもよ?」
「もう、クレスさんたら…」
ミントはクレスの差し出した手に自分の手を重ねてから、やれやれ見てらんないと言った様子のディオを振り返った。が、謝罪の言葉を言おうとしたそのときには、いつのまにか駆けつけたメルのお説教がはじまっていたので、ふたりは顔を見合わせてわらう。
そんな様子を、チェスターはすっかりあてられたとばかりに眺めるばかりだった。
(061101/なりダン/ディオのクレスの呼び方って師匠でいいの?)
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