046:雪降る夜 / 047:千切れた鎖 / 048:過去 / 049:勇気をくれたひと / 050:呪文
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046:雪降る夜
はらりはらり。
綿毛のような雪が、白い空から舞い降りる。
どうりで冷え込むわけだ。
冷たい風が入りこまないように、外套の襟元をぎゅうと押さえつける。
今日は雪が降るかもしれないですよ、と朝聞いた話をぼんやりと思い出していた。
傘が必要なほどではないが、もっと寒さの対策をしてくるべきだった。
少し寝ぼけていて、きちんと話を聞いていたなかった、朝の自分が恨めしい。
暖炉の炎で暖かい空気に包まれた家に、早く帰りたい。
そういえば忍びの里の温泉、あったかかったなぁ…。
今日の夕飯は何だろう。シチューがいいな。身体の芯から温まるような。
考えているうちにお腹まですいてきてしまった。
寒さのためかなり足早に歩いていたせいで、いつもより早く帰ってこられた。
コンコン、木製のドアを二度叩く。
ほどなく、聞こえてくるぱたぱたという足音。
開かれるドア。
「おかえりなさい」
出迎えてくれたのは。
どんな炎よりも、どんな風呂よりも、どんなシチューよりも、クレスを心からあたためてくれる、笑顔。
「ただいま、ミント」
(20140113/初出:2014冬オムニバス「白雪が教えてくれた」)
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