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弄ぶ指先(お題提供:repla 様/[癖]) / ふとん / おんな / 素的 / かたおもい / 恋文(ラブレターの彼とサクラ) / 睡眠導入 new
表記のないものはカカシとサクラです


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弄ぶ指先


「先生ってあたしの髪好きなの?」
「ンー?」

 遅めの昼食をふたりでゆっくり腹に蓄えたあと、片付けもせずだらだらと。
 カカシはサクラの背中にもたれかかり、まどろみながらも繰り返し繰り返し、サクラの髪に指を入れては、さらさらと梳かしてゆく。

 ただでさえサクラの2倍はあるであろうカカシの体が、さらに力を抜いてこちらを頼ってくるのは正直重くてうっとうしいのだけれど、全身を包む体温は心地よく、どうにも強く拒むことが出来ずにいる。
 そんなサクラの葛藤の間も、カカシは飽きもせず髪を弄ぶことをやめない。

「きれいだねぇ」
「ふっふー、やっぱり女のたしなみですから?」
「あらあ、俺も手入れすればサクラちゃんみたいにきれいになれるのかしら」
「んー、それはとっても難しいかも」

 カカシの重みで自由にならない身ながらむりやり振り向けば、ごく近くに眠たげな顔があった。カカシの硬くごわごわした髪をなでつけ、サクラは苦笑いする。

「いいシャンプー教えてあげようか」
「んー、そうだねぇ」

 気のない返事にサクラはむくれたが、カカシは気にも留めない。
 相変わらずさらさら、さらさらと。無骨な指でサクラの髪を梳く。

「なによ先生、あたしの御髪が羨ましくないわけ?」
「んー、羨ましいというよりも」

 やはりサクラの髪に手を伸ばしながら、カカシはさらに顔を寄せ、ささやきのように口を開く。しっかりと目と目を合わせて。

「サクラの髪だからすてきだなと思うわけで」

 まったく普段のカカシからは似つかわしくないきざったらしいセリフに、うっとりすることも呆気にとられることもなく、ただサクラはため息を一つこぼしたあと、半目で冷たく言い放つ。

「…寝ぼけてるのね」
「あははー」

 このー、と言いながら殴りかかってくるのをカカシも笑いながら受け止めたが、そのこぶしはあまりにもゆるいものだった。


(061011初出/5周年記念企画)



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(20140126/57巻ラブレター問題)



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ふとん


「布団がないんだよね。布団ていうか…マットレス?ほら冬だと床冷えするでしょ〜。引っ越してついでに家具も買い換えたんだけどまだ届かなくてさ」
「…はぁ」
「サクラ今日うち来る?」
「ええと、」
「サクラが来るならまぁさして気にならないかもしれないけど、それでも明け方はきっと冷えるしなぁ。おまえも寒いの嫌だろ」

 出会い頭に、まったく唐突な話である。「おお」でも「こんにちは」でも、そんな簡単な挨拶のひとつもなく。
 いいやそれより、なぜこんな話をされなければならないのか。別にサクラにとって、この上司の家に布団がなかろうが引越ししたばかりであろうが知ったこっちゃないのだ。
 
 そしてなぜだかさもあたりまえのように、共寝をすることに決まっているらしい。
 まどろっこしい言い方ではあるが、寒くないとは、つまりはそういうことだ。

「先生」
「んー?」
「いつからあたしたちってそんな仲になったんだっけ?」

 そう問うと、カカシは驚いたような顔をしている。
 そんな顔をされては、まるでこちらが間違えているようだとサクラは思った。

「いや、俺はいいよ、どっちでも。別に今性欲に駆り立てられてってわけでもないし。横にサクラがいてもたぶん手は出さずにいられるし。ただえっちしたらあったかくなれるしなぁと思っただけで」
「答えになってません」
「俺は好きだよ、サクラのこと」

 そういうことはもっと大事にして欲しい言葉なのだが。
 一応驚いたふりをしてカカシを見上げると、にっこりと笑うばかりで。
 元々答えなど決まっているのに、その上そんな顔を用意されては、これ以上多くを問い詰める気にもなれない。

「で、どうするわけ」

 ぼんやりと疑問形にされてはいたが、否定する意思を生み出させないような調子だった。差し出された手が、その度合いを強める。
 何に対してどうするのか曖昧だったが、結局のところすべて肯定してしまうのだから、いっそその手を取ってしまうのが簡単なのだ。


 ふたりで手をつなぎ、ホームセンターへと歩く道すがら、これからまぐわる布団を整えるための買い物をするというのも、なかなか滑稽に思えた。


(061112)



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おんな


「カカシ先生が、好きです」

 左目と口を隠したそのひとの、表情をうかがうのは難しい。
 しかし実は、露にされた右目と眉だけでも、そのひとの表面的な考えを見抜くことは容易いのだ。

 それが、とても困った顔であることは、付き合いの長いサクラにはお見通しだった。


「俺なんて好きになっても不幸になるだけだよ」

 ずいぶんたっぷりと待たされて、ようやく告げられた言葉はひどく頼りない口調だった。


「…向けられた好意は適当に受け取って、いい顔しとくのが先生のやり方じゃなかったの?」

 カカシは確かにそう言った。恋に恋することを卒業してから、それでいてなおも恋に憧れを抱こうとしていた、そんな時期に。
 憧れを抱きたかったその相手に、みすみす理想を打ち砕かれたのだ。忘れもしない。

 それを聞いて、現実に落ち込んだわけではない。いっそ想いは燃え上がった。
 この気持ちを重いと言われるのなら、覚悟を決めさせる覚悟すらできていた。
 あるいは、はじまりは適当だとしてもかまわなかった。食らいついて離さない覚悟も。
 
 でも。
 窘められてしまった。子供のわがままだと、ひらりと交されてしまった。

 自分では、気のない付き合いすらできないほど、カカシの中のラインを満たさないのか。
 まるで可能性がない。そう思うと、ひどく悲しくなってうつむいて唇を噛む。

 しかしカカシはサクラの想像とは異なり、あーのーねーといいながら、頭をぽんとやさしく叩かれた。

「それは適当なひとと適当にお付き合いする場合デショ」

 ようやく顔を上げると、にこりと笑ったカカシと至近距離で目が合った。


「サクラのこと、適当な女だなんて思ったこと、ないよ」


 おそらくこの場合、適当に思われていないと言うことこそが、喜ばしいポイントなのだと思うのだが。

(女)

 カカシの言ったその言葉の響きがあまりにも不思議なものに思えて、ついそちらに気をとられてしまったのだ。
 女、とは。今のこの場合の女という言葉の意味とは。

「先生、あたしが女だって知ってたんだ」
「…なに言ってるの?」

 適当じゃないのは生徒だからか、それとも女だからかはこわいから、聞かない。

「えへへへへ」
「えー、なにそれ。告白流されてその反応って言うのはどうなの?」

 カカシの言い分は最もだったが、こぼれる笑みはどうやってもおさえられなかった。
 

「覚悟しなさいよ、先生。あたしはしぶといんだから」
「よく知ってるよ」


(20080607up/片想い10題とぼんやりリンク)



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素的


「…暑いねェ」

 さきほどサクラに買い与えたとき、自分の分も買っておけばと後悔した。
 となりではちょろちょろ舌を出しながら、ソーダ味の棒アイスを舐めるサクラ。
 アイスは別に好きじゃないし…なーんて2本目を手に取らなかった自分の判断が悩ましい。
 暑い日に食べるアイスは味じゃない。体温調整のための道具だ。

 ふたりして、浅瀬に足をつけている。
 それほど冷たい水ではなかったが、さらさらという流れにまぎれて、なんとなく涼しげではあった。
 が、それでもやはり、じりじりと照りつけてくる太陽は容赦なかった。

「そんな格好してるからよ」

 そんな暑くしい顔布しちゃって。そう言いたげだった。

「取っちゃえば?」
「えー、秘密をまとって男は魅力を増すのに」
「そういう自意識過剰なこと言ってる限りすてきとは言いがたいわね」
「ふふふん、そうやって俺の素顔を見ようという作戦だね、うまいね〜」
「(チッ)」

 以前、7班メンバーでカカシの顔布をはがそうと画策したことがあった。不発に終わったのだが。
 それからも何度となく要望はあったのだが、そのときの大失敗にこりたのか、その後はたいした作戦は練られなかったようだ。
 別に、そこまで頑なになることもないのだけど。

 やっぱり暑いし。


 ジリジリジリジリ。
 

「一口」

 そう言って唇を向けた先は、サクラの手にあった棒アイスではなかった。


(20080815/初出:2008夏オムニバス)



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かたおもい


 サクラ


 どこか遠くのほうで、ずいぶんと優しく名前を呼ばれた。


「サクラ」


 もういちど。


「ん…、」
「こんなところで寝てると風邪ひくよ」

 ゆっくりとまぶたを持ち上げると、ぼんやりと見え出した声の主に、一気に覚醒させられる。

「せ、んせ! 何してるのこんなところで」
「それはこっちのせりふだけどね。図書館、もう閉館だから。そろそろ起きてあげないと司書のひとかわいそう」

 その言葉にはっとして、顔を上げる。
 ごめんなさい!と大声を向けるのは、もちろん声の主ではなく、カウンターの主。
 慌てて広げていたノートや持ってきた資料をひとまとめにして、慣れたふうに利用カードと一緒にカウンターへ置く。
 気の弱そうな今日の担当は、本当に困り顔だったので申し訳ない。

「じゃなくて、今ってまだ病院に拘束されてるはずでしょう?」

 切り替えの早い会話に少々戸惑いながらも、カカシは笑う。

「俺がおとなしくできるわけないデショ」




 確か。
 また何らかの任務の際の疲労だか負傷だか。
 そう言っていつもの病院へ運び込まれたのが3日前。

 サクラはまた何度目かの、ギリギリと張り裂けそうな想いでそれを出迎えたのだった。

 図書館は、ふたりが出てすぐあとに消灯された。あの司書には何か用事でもあったのだろうか。申し訳ないけれど、でもカカシが現れなかったらずっとあのままだったのだろうか。どういう経緯で現れたかは知らないけれど。
 とっぷりと日も暮れ、吐く息も白い冬の夜の帰り道。

「こんな時間まで、頑張るね」
「わたしより頑張ってる人なんてたくさんいるわ」
 先生とか。

「でも、サクラは優しいから。いつも誰かのため、誰かのため、だろ?」

 そう言ってカカシは言葉以上に優しげに、頭を撫でてくれるけれど。

「…そんなこと、ない」


 この力で誰かが救えるのなら、誰よりも自分が救われる。
 この力はあなたを守りたいわたしのための力。


(20090117/衝動)



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恋文


「次、戦争へ出て、生きて帰ってくる保証はありません。だから…」

 手渡されたのは、一通の手紙。
 生きるか死ぬかというときに、託された想い。

 胸が、熱くなる。

「…ありがとうございます。でも、」

 好きなひとが、いるんです。
 そう告げたときの、彼の落胆した表情は、いまでもはっきりと覚えている。

「うまくいくといいですね」

 悲しげな笑顔。それでも、好きになったひとの恋を、大事にしたいという想い。
 生きるか死ぬかというときに。

 こんなまっすぐな想いを受け取れたら、どれほど幸せだろう。

 それでも、受け取ることはできなかった。
 受け取るほどの価値が自分にあるとも、思えなかった。

「…あなたも、」
「え?」

 あなたの想いには応えることはできないけど。

「あなたも、きっとうまくいきますよ」

 わたしではない、誰かと。幸せに。

「だから、生きて帰りましょう。里へ」

 ただの綺麗事かもしれない。医療忍者である自分と、前線へ向かう彼では、同じ戦場に立っていても、状況は少し異なる。
 それでも、生きてさえいれば。傷は治せるし、誰かと、想いを通わせられる。

「生きて帰って、もう一度アタックしてもいいですか」
「もう一度振っちゃうかもしれないですよ?」

 彼がもう一度笑顔になる。
 きついことを言ったのに、もう悲しげなそれではなかった。


(20140126/57巻ラブレター問題)



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睡眠導入


※生活を共にしているカカサクちゃん




 近頃どうにも夜にきちんと眠ることができず、日中の職務が捗らないでいた。
 最近特にデスクワークが増えたこともあり、とにかく仕事中の眠気が治まらない。

 このままじゃまずいなぁ。つらいけど、就寝前の読書の時間を減らして、少しでも早く眠る体制を整えようか。
 しかしそんなことを考えながらもまた危なくなってきたので、コピーを取りがてら窓辺に立ち、仕事中の同僚たちに背を向けた。こみあげるあくびをかみ殺しもせず、大きく口を開ける。にじんだ涙を拭いながらようやく目を開くと、少し遠くを歩く人影に気付いた。見慣れた歩き方。ずいぶんとボロっボロの男の姿。
 
(カカシ先生)

 一ヶ月に渡る任務から帰ってきたのだ。思わず大声で呼びかけたくなるのをぐっとこらえる。仕事中だし、疲れた先生にここまで歩かせるのも酷だ。
 トイレに立つふりをして抜け出し、一瞬だけでも顔を見に行ってしまおうか。しかしそんな僅かな逡巡の間に、先生はすかさずこちらに気付き、こちらへのんびりやってきた。そういう人なのだ。

「おかえりなさい」
「ただいま」

 にこりと笑う表情に虚勢は見られない。着衣はぼろぼろで疲れはあるようだが、見た目にはひどい負傷もないようでほっとする。

「報告終わったら、ちゃんと健診受けてから帰るのよ」
「サクラが帰ったら診てくれるでしょう」
「今日は遅番なの。だからわたしも診るけど、健診も受けて」

 強い口調で告げれば、わかったよ、と苦笑する。
 内心面倒だと思っているだろうけど、きっと素直に医務室へ向かってくれる。こちらの心配は、ちゃんとわかってくれている。
 本当ならいますぐ診たいところだけれど、あくまで職務中だ。生真面目すぎるとは自分でも思っているけれど。
 今だって気が引けて、背後を気にしながら静かに言葉を交わしている。

「先生、寝てていいからね。おかず冷蔵庫にあるから適当に食べてね」
「ありがと」

 じゃあ、と見送ろうとしたところで、じいと見つめてくる視線が気になった。

「なに?」
「眠れてないのか?」
「…うそ、クマ!?」
「いやー、目元は出ちゃうよねぇ。サクラもそんな妙齢になったのかと感慨深いよ」

 あんなに気を遣っていたのにとうとう、うるさいわね!と結局大声を出してしまった。悪びれもなくアハハと笑う姿を憎憎しげに見つめつつ、恐る恐る振り返れば近くの同僚と目が合ったが、微笑ましげに目を細められたので、肩をなでおろす。全員が同じように好意的に見つめてくれていたらいいけど。
 しかしそんなこちらの葛藤も知らず、呑気に笑い続けていた先生の手が伸びてきて、一瞬の怒りでぎゅうと握っていたわたしの拳を優しく包んだ。

「ふとんあっためとくから、今日はよく眠れるよ。ここんとこ冷え込んだもんな」

 じゃあお先ー、とひらひらと手を振りながら去ってゆく背中を見送って、ようやく気付いた。
 そうだ、寒かったんだ。そんな単純な理由で。

 あとはたぶん、常用していた安眠剤が不在だったから。
 枕が替わるとだめとか、お気に入りの毛布がないととか、そんなレベルで依存しきっていたのだ。

 思わず嘆息する。
 どうしたって頼ることが多い自分だから、なるべく自立した関係になろうと努めていたけれど、まだまだなかなか難しい。

 それでも今夜帰ればあたたかい布団が待っているのだと想像するだけで、頬が緩んでしまう。

(少しずつがんばればいいよね)

 とりあえずまずは、今晩ゆっくり眠ったあとで。



(20141105)



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