「あ!」

 何の気なしに入った雑貨屋で、目に入ったのは色違いのマフラー。
 赤、青、黄。

(わたしたちみたい)

 両端に簡単なラインが入っただけのシンプルなそれは、男女どちらでも使えそうだった。
 まとめて手にとりかけて、一瞬考える。

(吼太はともかく、鷹介が素直におそろなんて使うかな…)

 大きな子供のような鷹介のことだ。変に恥ずかしがるかもしれない。
 いらねーよ!なんて突っぱねられたら、いやぁーな気持ちになってしまう。
 それでも、きっと吼太がなだめてくれて、謝りながらやっぱそれくれとか言ってくるんだろうな。

 あまりにもすんなり想像できてしまって、思わず七海は吹き出してしまう。

 家族以上に、家族のような。そんな存在。
 ずいぶんと長い間、一緒にいるのだ。
 つらく厳しい戦いの中でも、なんとか諦めずがんばってこられたのは、ふたりがいたから。
 いつもいっしょ。いつまでも?

 ジャカンジャを倒して、平和が訪れたら、ハリケンジャーはどうなるのだろう。
 急に、言いようのない寂しさが胸を掠める。
 いつも、いっしょ? いつまでも?

「あれー、七海じゃん」

 は、と声のしたほうを振り返ると、鷹介と吼太が連れ立って歩いていた。

「買い物?」
「あ、えーと、…うん」

 なんとなく、手に取らなかったマフラーを見られたくなくて、棚を隠すようにずれた。
 不自然だったかな、と懸念するまでもなく、ふたりはすっかりと盛り上がっていた。

「今さー、ちょーどお前の話してたんだよ」
「え?」
「こないだのマゲラッパとの戦いの途中でさ、鷹介のこと助けてただろ?」

 吼太の言葉に、思い返してみる。
 助けた…というよりも、たまたま視線の先で鷹介の背後が狙われていたことに気付いて、思わず体ごと突っ込んでしまったこと。
 結局敵からの攻撃は避けられたが、鷹介と七海が頭を派手にぶつけて、しばらくふらついてしまったのだ。

「忍術でもなんでも使えばよかったのに、つい体が動いちゃうのが七海らしいよなって」
「そうそう、女の子のくせに生傷耐えないとか」
「ちょっとー! 褒めてるのけなしてるのー!?」

 笑いながら話すふたりに少しだけ腹が立って、ついむきになってしまう。
 しかしそんな様子さえ、鷹介は笑い飛ばしてくる。

「違う違う、感謝してるんだって!やっぱり俺たち落ちこぼれだし、三人で協力してかないとな」
「ああ、ずっと一緒にね」

 足りないところは補い合って、ピンチの時には助け合って。いつだってそうやって。
 これから、どんなふうに自分たちが変わっていくかはわからないが、どれほど生活が変わっても、この絆だけはずっと変わらない。

 さっきまでの不安が、嘘のように消えた。

「俺たちもう帰るけど、七海はまだ買い物?」
「うん、もうちょっとだけ。先に帰ってて!」

 それじゃお先ー、と大きく手を振るふたりを見送って。
 改めて3本のマフラーを手に取り、七海はレジへ向かった。
(20140113/初出:2014冬オムニバス)