結局、明確な答えはもらえなかった。
進藤と別れたと聞いて、まず真っ先に喜びの感情が湧いてこないことが不思議だった。
ここ最近の奈瀬のめまぐるしい恋愛遍歴のせい?いいや違うそこを問題にしているなら自分が奈瀬と付き合いたいと思う気持ちは矛盾してしまう。
「あんたや和谷と同じように」、一緒に遊んだりしたと奈瀬は言っていた。進藤と。
わかっていた。答えなど言われなくても。本当は。
友達にしかなりえなかったのだ。
翌日、3時間目が終わった後にふらりと奈瀬のクラスへ立ち寄ってみた。
見渡すと、奈瀬も和谷の姿もない。ふと、奈瀬の隣の席の飯島が目に入る。文庫本でも読んでいるのか、うつむいているように見える。
そういえば奈瀬ばかりで飯島を気にしたことはあまりなかった。ときどき表情を盗み見ることはあっても。そんなことを思いながら近づいていく。
「おーっす。奈瀬は?」
「いない。朝はいたけど」
ふうん、と言いながらそのまま奈瀬の前の席を拝借した。昨日と同じように、背もたれを抱えながら。
「…なんだよ。今日は和谷もいないぞ。あいつは休みだ」
「別に?」
「用、ないだろ」
その席の主はいないのに、小宮は奈瀬の席を見ながら頬杖をつく。
見かねて飯島が声をかけたが、構う様子はなかった。
「なぁ、オマエさぁ」
飯島が再び本に視線を戻したそのタイミングだった。
「こいつのこと好きだろ」
こいつ、と言いながら奈瀬の席のほうをくいとあごで示す。
一瞬何を言っているのか理解できなくて反応が遅れたが、ひと呼吸おいたところでようやく反論する。
「俺が?冗談」
「んなわかりやすく顔に出されて冗談も何も」
いつのまにか飯島に視線を合わせていた小宮が冷たい目でこちらを見ている。そう言えばコイツときちんと目と目を合わせて会話をしたことがあったか…と振り返ってみたが、それよりいつまでも目が合っているのが気持ち悪くて目をそらした。
「オマエ、俺と奈瀬が一緒にいるときつまんなそーな顔してんじゃん」
「…おまえもな」
小宮の言葉に否定はしなかった。反論したところでくだらない言い合いが続くだけだと思ったのだ。だけれど言われっぱなしはシャクだったので、小さく反撃した。相手が反撃と思ったかどうかはわかりかねたが。
「俺もいまさらなぁと思いつつ頑張ってみようと思ったんだけどさぁ、なーんかやっぱり可能性低いみたい」
引き際がよすぎるのがつくづく俺らしいわ、と小宮はおどけて言ってみせたけれど。
…引き際がよすぎるんじゃないか、と内心思ったけれど。
好きだからこそ、…奈瀬だからこそ?
取り返しの付かなくなる前に。元に戻れるうちに。
「進藤とも別れたって聞いても全然うれしくなかった、し。なんつーか、別にそうはならなくてもこいつとは付き合っていきたいし、てのはワガママ?」
さっきと同じように、また奈瀬の席の方をあごで示しながら小宮は言った。なんだかんだでやっぱり好きなんだな、と言う意味合いがこめられているような気がした。
だけれど、その言い方は、昨日見た小宮の態度が示す「好き」とかだいぶ違う気がした。
それは本当に、友達としての…。
「…諦めるのか?」
ふと口をついて出てきた。
そう言ってから、諦める、と言う言葉がなんだかひどく不似合いに聞こえた。
「オマエは?」
「ハナから思ってない」
「うわあ」
「なんだよ」
別に?と返すと、小宮はなんだかニヤニヤしながらこちらを見ている。
明らかに何か言いたそうだ。
確かに自分も少しばかり想像?したことはあったけれど。
きっとあいつは自分なんて眼中にないだろうとか、そう思わないわけではなかったけれど、でも踏み出さないのはそういうことではない気がして。少なくとも、今の小宮にはそれはすっかり悟られている気がするけれど。
「なー」
なんだよ、と言いかけたが、その小宮のひとことがなんとなくわかってしまったから、言わなかった。
(20051027)
今思ったけど、小宮と言いながらみたにゃんの顔を思い浮かべながら書いているわたし。
久々に原作でオバタさんの小宮くんを見たら、「今だったら絶対こんな性格にしない…」と思ったとか思わないとか。捏造もいいとこ。