起きるのが妙にだるかった。
 学校をサボることに罪悪感はさほどないけれど、今朝はなんだかおっくううだった。

(休んじゃおっかなー…)

 ムダに出席率だけはいいし、とぼんやり思う。学校に行けば、また流れであの男に会いに行ってしまうかもしれない。


 いけないと言うことくらい最初からわかっていた。それでも続けてしまっているのは。 
 進藤への不満はない。でも、なんとなく違うとも感じている。
 結局すべて流されている自分が悪いのだ。

 終わらせなければならないと思っていた。全部。


 あきらめたように一度大きく目を開くと、ゆっくりと体を起こした。
 早いほうがいい。何もかも。





 奈瀬が屋上にやって来たのは、昼休みの終わる5分前だった。

「おはよ」
「おう」

 特に約束はせずとも、なんとなくここに来れば会えることはわかっている。それは恋人として付き合うようになったからと言うわけではなく、長年の付き合いから。
 とは言え、最近はあまりここで会うことはなかった。ここで会っている相手は、また別の男。

 いつものフェンスのあたりを眺めながら、思わずため息を漏らす。
 昼休みはもうすぐ終わる。あいつももうすぐ来るだろう。決意はしてきたはずなのに、気持ちは揺らいでいる。
 …顔を見たらまた流されてしまいそうで。


(やっぱあいつにはもう会わないでおこう)

 きっとそれがいい、と半ば暗示でもかけるかのように自分に言い聞かせた。
 まずは目の前のことからひとつずつ片付けなくてはならないと言うのに、意識があちこちに飛んでしまう。
 嫌な場所だ、ここは。



「なぁ奈瀬、」

 相変わらず気持ちがフラフラしたままだった奈瀬を引き戻したのは進藤の声だった。
 進藤はこちらを振り向かないままだったが、なんとなく言いづらそうな話題を口にしようとしているのは伺えた。

「…うん」


 何も言葉にしなくても、なんとなくわかった気がした。
 お互い、同じ気持ちでここにいることを。


「やっぱりあたしたち、友達でしかいられなかったね」
(20051015)