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※はっきりと描写はありませんが、大人な様子が漂っています





 いつもどおり、まるで義務のように行為を終わらせたあと、加賀はまるで付き合って半年くらい経った恋人に向けるように自然に言った。

「おい、今日うち来いよ」
「…なんでよ」
「明日から3連休だぜ?それともお前ココ来るのか?」

 3連休だぜ、なんて言われても。
 別に加賀と、わざわざ家に行ってまで毎日セックスをしなきゃならないなんて言う約束はない。そもそもここに来なきゃならない理由だってない、はずなのだが。

 …まぁ確かに実際のところ、毎日とは言わずともここへ来ている理由から考えたら、家に来いだなんて言われてしまっても否定しきれない部分はあるのだけれど。

「心配すんな、ひとり暮らしだ」
「そうじゃなくって、」
「進藤とやらじゃ満足できねんだろ?」
「…」
「じゃなきゃこんなとこ来ねえよなぁ?」
 加賀はニヤリとだけ笑う。

 ああ、なんて腹の立つ笑い方!
 奈瀬は乱れた制服を調えながら、反撃の言葉を考える。が、何も出てこない。

 加賀の前では自分が無力になっていたのは前々から感じてはいたが、まったくなんの悪あがきも出来ない。


「ここの近くはまずいだろ?渋谷でいいか?駅前で待ってろ」
「…」
「なんだよ、来ないのか?」

 来ないのか、ですって?なんで行くことを前提に話されているのだろう。
 行かない。行くわけがない。
 
 自分には進藤がいるのだ。…恋人と言う肩書きだけなのだが。


「…ねえ」
「なんだよ」

 すっかり準備を終え、教室へ戻ろうとする加賀を呼び止めた。
 
「誰でもいいなら、あたしじゃなくても」
「お前が望んでるからこうなってんじゃねえの?」

 あんたから切ってくれたら止められる。
 なんて甘ったれた考えはそこで消えた。

 ああだめだ。加賀鉄男はきっと奈瀬を甘やかしたりしないだろう。
 そうして自分だってそれなりの見返りを得ているのだから。まさにギブアンドテイク。



「俺、今月に入って無欠席」

 去り際に、似合わないピースサインを決めてくれた加賀を、せめて心の中だけでも罵倒しようと思ったのだが、それに適当なひどい言葉は何一つ思いつかなかった。

 そうか、もうこんなこと初めてひと月も経つのか、と、思った。




 結局その日は加賀の家に行くなり、流されるままにベッドに向かった。
(2004?)