やはり、『類は友を呼ぶ』ってことなんだろうな。


 和谷と小宮は双子のようにそっくりだった。もちろん顔はちっとも似ていないのだけど、服の趣味だとか好きな音楽、ものの考え方、好きな女性タレント、ついでに髪形も若干カブっている。

 だからたぶん2人が仲良くなるのはきっと当たり前のことで、「かわいい」「かっこいい」の2つともが同居している容姿を持ち合わせているそんな2人がいつも一緒にいればいやでも目立つし、女子から恰好のターゲットとして見られるのも当然のことだった。
 でもそれでも男子にもウケがいいのだから、誰も2人に対して嫌悪感を抱くようなことはなかったと思うし、例え少数派としていたとしても、大多数の支持派に巻かれて力なんか持ちえなかったのではないかと思う。いわゆる典型的な人気者ってやつだ。

 そうして当然のように女の子からもてた2人だったが、しかし同じくらいふられることも多かった。
 彼女の前では嬉しくてついベタベタしてしまう和谷は、「イメージと違う」と長続きしないことが多かったし、逆に小宮はクールになりすぎて、「つまらない」とか「冷たい」と言われてやはり長続きしなかった。
 2人は大人と子供の中間点のような高校生の女の子に、接するのに丁度いい温度を探り当てることが下手だったのである。

 そしてふたりが告白する時・される時、決まって相手からは奈瀬について聞かれた。「彼女じゃないの?」と。
 確かに必要以上に仲は良かったが、それは付き合いが長いからだと和谷は言い、小宮もそんな和谷と一緒にいたのだから自然と仲良くなるのは当たり前だと言った。
 実際、けっこう仲のいいただのクラスメイトに違いなかったのだ。

 2年生になって、小宮だけが別のクラスになるまでは。













「…なんで俺だけ」

 クラス分けの発表がされたあと、明らかに落胆して小宮がつぶやく。
 和谷と奈瀬だけではなく、ことごとく特に仲の良かった顔ぶれと離されたのだ。

「まー、まー。遊びに来なさいよ。友達出来なかったら慰めてあげる」
「うるせえ」
「あー、小宮ぁー!俺だって奈瀬なんかよりお前と心中したかっ…」
「キャー!!俺間違ってもお前とは死にたくねえ!」

 奈瀬はぎゃあぎゃあ騒ぐ2人をよそに、小宮のクラスの前に貼り出された出席簿を見た。
 確かに1年のときに同じクラスだった面々とはことごとく離されてはいたが、付き合っているのだかもうすぐ付き合うんだかという話を聞いていた女子の名前を見つけ、にやりと笑った。

「なによ、彼女一緒なんじゃない」
「…まー」
 照れくさそうに笑う。なんだかんだ言ってやはり嬉しいのだ。
「わ、いいなぁ…。あー、俺も早いとこ傷心のイヤシを…」

 反対に和谷は1週間前にふられたばかりだ。みきちゃんとか言うこれまた可愛い子に、「和谷くんてもっとクールな感じだと思ったのに」と言われてふられたらしい。奈瀬と小宮に散々笑われた。

「だけどなんでふたりってばそんな常に彼女いんのよ。うらやまー」
「別に常にはいないけどさ」
「あたしなんて去年の冬以来ときめきさえないわよ!あーん彼氏ほしー」
「ときめき!」
 ツボに入ったらしく、ときめき!ときめき!と連呼してげらげら笑う和谷のみぞおちに、奈瀬の拳が確実なヒットを決めると、笑い声はあっさり止んだ。
 しかし小宮の心は、なぜだか奈瀬の「彼氏欲しい」発言に、いやに食いついてしまったのだ。


(…あれ?)


 1年間同じクラスだったが、恋愛の対象として意識したことは一度もなかった(と思う)。
 最初和谷から紹介されたとき、ああ可愛いかもとは思ったが別にそれだけだった。
 一緒にいると楽しかったが、それはあくまで“友達として”。

 今自分には好きな人もいる、はず。



「じゃーね、そろそろ行くわ」
「お、おう」
「まーせいぜい頑張りたまえ!ワハハ!」

 そう言って、奈瀬と一緒にやいやい、楽しそうに教室へ戻っていく和谷の背中を眺めながら、小宮は出会って初めて、和谷に対して嫉妬を覚えた。