カーテンをきっちり閉めていなかったおかげで、その隙間からこぼれる日差しが、ピンポイントで顔を照らす。
 まぶしさに顔を背けたり、布団を引っ張りあげたりもしてみたけれど、その明るさに負けてしまったら再びは寝付けず、あきらめて目を開ける。

 しかし自分のそんな葛藤も知らず、隣にはぐっすりと眠る男。

 夕べだか明け方だか、冷たい体がとなりにすべりこんできたのは覚えているのだが、睡魔に勝てずに言葉はかけずにそのまま眠り続けたのだった。忘年会とか言っていたっけ。本当にこんな年の瀬の瀬にわざわざやることもないだろうに、と愚痴をこぼしていたのを思い出した。

 ぼんやりとベッド脇の時計を見ると、もうすぐ8時。学生時代は休みといえば昼ごろまで寝ていたようなこともあったけれど、近頃は少なくなった。
 暖房の入っていない部屋はそれでもまだ冷えて、なかなかあたたまった布団から出るのは難しく、かといってこれといってすることもないので、ぼうっと隣で眠る男の顔を見る。まじまじ、見つめる。

 どれくらいか前から、思い出すのも億劫だけれど、こうなることを願っていた。
 整った顔立ちと、年上であることを利かせてやさしさを振りまくだけ振りまいて、決して手の届かない夢みたいな相手だとどこかであきらめていた、のだけれど。
 数ヶ月前から同じ家に暮らし、同じ釜の飯を食べ、同じ布団で眠る生活をしている。
 
 付き合いはじめたのはそれよりもっと長くなるが、さらには出会ってからを数えれば10年以上も経つというのに、悔しいが相変わらず、この顔を見るたびに毎日どきどきしている。
 友人に話したときには、スリリングな毎日だねと笑われた。
 だが、楽しいのだ。


 そうこうしているうちに、やはり日差しに負けたのか、男ももごもごと動き出す。なんとなく、布団の中の男の手を探り当て、そっと握り締める。


「おはよう」

 眠たげな目の男が、そっと手を伸ばしてくる。
 これから自分は抱き枕にされて、この男はもう一眠りするのだ。
(2008.01.01 A HAPPY NEW YEAR!)