(ああ、5月ってなんて暑いのかしら)

 さっきからつなぎっぱなしの右手が、汗ばんでゆきつつあるのがものすごく気になっている。
 そうなのあたしの悩みは人一倍の汗っかき。

(…いっかい離して手ぇ拭きたいわ)

 しかし会話も残念ながら?有難いことに?はずみっぱなし。
 ここで唐突に「ちょっと手ぇ離してくんない?」なんて言ってタオルで手ぇ拭くだなんてムードのないことする勇気はなかったりして。
 だけどなんかすごい申し訳なくないし
 だけど相手の指はやけにしっかり絡み付いてて
 相手のやさしさに比例して汗ばんでゆくあたしの手
 …イヤー!! こういうのって普通男とかが気にすることじゃなくて!? ああ、夏だけは冷え性になりたいとか思うんですけど…勝手ですかねぇ? 冷え性じゃない人間だから言えること?

 あはは、なんて笑いつつ内心なんかいいタイミング・きっかけないかなぁとか思ってる。今。
 お昼食べよう…ってさっき食べちゃったし、どっか行こう…つってもだから今向かってる最中なんですけどみたいな。
 トイレ? …けど近くにあるのはきったない公園の公衆トイレのみ!(別に用足しじゃないからいいっちゃいいんだけどなんか。ねぇ?)
 なんか、言い訳を。
 なにか、なにか。






「ねぇ」
「うん?」
 思わぬことが。1度浮かんだことはなかなか頭から離れず。
 運良くというか。人通りの少ない…と言うか今だけに関しては誰もいない通りに出たから。




「キスでもしよっか?」









 かなり強引で、あたしにしちゃなかなかない申し出に、相手は戸惑い驚いて、あたしの顔をじいと見つめてきたけれど、まるでそれを無視して、つないでいた手を離し首に巻きつけて、顔を近づけながらそぅっとあたしは密かにカバンから取り出しておいたハンドタオルを握り締めた。



(2003/05/10up)
まぁ記念なんでと書き上げたわけですが、あえてコメントはしない方向で。